行方の行方

このサイトは盧 興錫による『風景の行方、作品の行方』http://rofungsok.ro21.orgの続編です。
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夜明け前の境内を急いだー出雲のおおやしろ
ooyasiro


早朝というよりまだ夜。
午前3時半に松江のホテルを出た。
昨夕、借りておいたレンタカーに乗り込むと出雲大社を目指した。

道なれている地元の人なら30分も車を飛ばせば着くらしいが、
結局1時間ほどかかって到着した。
コンビニで買ったおにぎりとカメラをリュックにいれると
駐車場から整理券を配布する門前目掛け、夜明け前の境内を急いだ。

暗がりの中に配布所の白いテントがぼんやりと見えた。
昨晩から並んでいたと思える人たちが十数人
近づくと、その後ろにも、その後ろにも人が並んでいて、
少し不安になりつつ最後尾まで行き並んだ。
見渡してみると先頭から百番目ほどだった。

出雲大社 本殿特別拝観、最終日
何とか拝観できそうなので安堵した。
前日は朝7時に三千人以上並んでいて、午後12時半には整理券配布が終わったという話だった。最終日の今日は大変な混雑が予想された。後日ニュースで知ったが、期間中に拝観した人は27万人にも及んだそうだ。
やはり朝5時半すぎには千人以上の列となっていた。

いずものおおやしろ(ふさわしい呼び方だ)本殿は、通常では塀に囲まれた外からしか見る事ができない。
もちろん、塀越しでもその存在感の大きさに圧倒される。
三十年ぶりに訪れたが、以前にも増して感動が押し寄せてきた。
太古の面影を残すその雄大な姿は、まるで巨大な生き物のようだ。
そこに大型の草食恐竜がたたずんでいるような感じがするのだ。
特別拝観とは、本殿域内に入り、本殿に上がりその回廊から建物内部を拝見できるというものだが、まさに”恐竜”とふれあうといった感だった。
三十年という歳月を経ても同じく心動かされることをうれしく思いもし、ありがたかった。

今の本殿は江戸時代中期(1744年)に建て替えられたものだ。
その前の建替えは江戸時代初期(1667年)で、この時に高さ48メートルだったものを半分の24メートルにした。
おそらく建物の高さ以外は、その姿を忠実に再現していると思われるが、
なにせ、その前の建替えは鎌倉時代初期(1248年)なので400年以上も経っている。建築工法や条件、環境といったものは随分変わったことだろう。

記録に残っている最初の建替えは平安時代(987年)だが、その後260年間に6度も倒壊したようで、建替えるたびに意匠(デザイン)の基本は堅持されつつも、その時代の工法や道具および材料、そして匠たちの精神が反映したものとなったであろう。たぶん平安時代の本殿は現存する江戸時代のとはかなり違った雰囲気だったに違いないし、創建初期の弥生時代は言うに及ばないだろう。
それぞれの時代を反映しつつ、おそらく遥か縄文時代より現代まで、おおやしろはかたくなに守り、守られてきた。その気の遠くなるような”時間”と”意志”は結晶と化し、本殿空間を取り巻いている。

とめどもなく想像は広がる…
おおやしろのある地は縄文時代から「聖なる地」かつ「重要な地」で、やはりそれらを表す象徴的な建築物があったにちがいない。なぜならおおやしろの前は外洋から少し中に入った天然の良港だったからだ。人や物が発ったり着いたり、行き交ったりする場だった。いきおい大きな建造物が求められるし、祈る場も必要だ。

縄文土器と弥生土器とは姿形、製法が全く違う。おそらく建築物も随分違った形をしていただろう。今のおおやしろから推測できる弥生時代の姿よりも、ごっつく「高かった」のではないか。火焔土器のようにかなり装飾的だったかもしれない。
弥生の人々はそのままは受け継がなかったが、その「高さ」は着実に引き継いだ。
伝えられる高さ96メートルという話もありえるような気がしてきた。

古代メソポタミアのジッグラトが思い起こされる。
神の住まいはとても「高い」ところにある、とは「発明」ではなかったか。
メソポタミアはその「発明」を具現化した。そしてそれは世界に伝播し、神殿として高い建造物が造られたり、山や丘の上に神殿が築かれた。発明を取り入れたところもあれば、そうでないところもあった。
世界の各所は隔絶していて、偶然『神の住まいはとても高い』という発明があっちでもこっちでもなされたとは考えにくい。
人類史は移動、移住の軌跡だ。「跡」は「道」となった。道を通って伝播したと考えるのが自然だ。



国道脇の食堂、昼飯をすませ裏の川べりから山と空を望む。
なんでもない出雲の風景。
なんでもないが美しい。


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