行方の行方

このサイトは盧 興錫による『風景の行方、作品の行方』http://rofungsok.ro21.orgの続編です。
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巨木文化が、古代の日本海沿岸にあった
izumo

出雲大社の話がつづく
八月の本殿拝観には何としても行きたい。
60年に一度のチャンスなのだから行くべきだが、
折り悪くも原油高、国内線航空運賃も値上げ、物価高…
タカイ、カネナイで意気がもうひとつ上がらないが、想像だけは先走る。
本を一冊購入して読んでみた。

【古代出雲大社の復元ー失われたかたちをもとめて】
大林組プロジェクトチーム/編
学生社/発行

面白い本だ。
古い文献や地域、宮司家に伝わる古代本殿(高さ48メートル)の姿を、
※現在の本殿は高さ24メートル
ゼネコンである大林組がプロジェクトチームを組み、
史料にあたり、資料を精査し、建設背景、環境、材料調達から設計、施工法、構造計算、見積もりまで考察、シミュレーションを行った。
そして言い伝えられているその姿が”ありえるもの=建築可能なもの”として証明してみせた。

このプロジェクトレポートは1988年の大林組のPR誌で発表されたそうだ。
レポートに対する反響がどうであったのかは分からない。
好意的だったのか?冷淡だったのか?
よく分からないが、なんと発表から12年たった2000年4月に、
本当にその古代本殿の柱根元が発掘されたのだった。
証拠の”ブツ”がでてきて、レポートが正しかったことが実証されたのだ。

この本はプロジェクトレポートと発掘調査資料、
そして出土した柱根元-写真までを一冊にまとめたものだ。
面白くないわけがない。

しばらくは、この本にそって想いをめぐらせてみる。
読み進める中で教えられる事は幾つもあったが、中でも目を見張った箇所は、
「縄文期以来の巨木文化が、古代の日本海沿岸にあった」というところだ。
トウダイモトクラシ…

○能登半島の真脇遺跡
5500年前(縄文前期頃)のもの
直径1メートル弱の巨木柱根跡が十八本もサークル状に並び
サークルの直径は7〜8メートル、柱と柱の間隔は1〜2メートル
寄合所、あるいは宗教施設なのか用途は不明
というものだ。
○新潟県青海町の寺地遺跡
○富山県の井口遺跡
○金沢市西南部のチカモリ遺跡
○その他、秋田県や鳥取県でも発見されている

出雲大社とこれら縄文時代からの巨木遺跡が関係ないはずはない。
大社本殿は巨木文化の流れの中で成立したものに違いない。
そして、他は時の流れの中で遺跡となったが、出雲大社は弥生時代以降の権力(大和王権)との駆け引きの中で生き延び、怖れられ現代まで命をつないできたのだ。

能登半島は家族旅行で二度ほど行った事があるが、
真脇遺跡のことはまったく知らずにいた。
惜しい事をした。
ただ、そのすぐ近くの珠洲市という所に行った時、博物館で珠洲焼というものを見た。
古墳時代からの須恵器という陶芸技術を受け継ぎ、12世紀頃から焼かれた青灰色の焼き締め土器だ。須恵器は古代朝鮮(三国時代-高句麗、百済、新羅)から伝わったものだ。珠洲焼が新羅の発掘土器とあまりによく似ているのに驚いた。
何百年も経ってなぜ須恵器を復活させたのか?
その間の技術の伝承はどうしていたのか?
珠洲焼のモチベーションはどんな背景からでてきたのか?

西暦700年代にまとめられた『出雲国風土記』に新羅の名がでてくる。
大和王権成立と三国の関係はよく知るところだが、
出雲を頂点とした日本海沿岸巨木文化圏が、新羅と深い関わりがあったとは実に興味深い。

巨木を扱う事ができた人々なら、おそらく舟も巧みに作った事だろう。
真脇遺跡は古代イルカ漁でも有名だ。
巨木に神性を見いだしていたことは十分承知だが、高く大きな櫓状の建築物は、海を見守るため、また海からもよく見えるという実用機能をかねていたのではないか。
巨木文化圏の拠点間を頻繁に舟が往来する姿が目に浮かぶ。
後世、このルートを北前船は通る事になる。

| 遙か遠くの光景 | 14:20 | comments(1) | trackbacks(0) |
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| - | 2009/09/10 5:20 AM |
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