行方の行方

このサイトは盧 興錫による『風景の行方、作品の行方』http://rofungsok.ro21.orgの続編です。
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灰色な午後、都市の空隙
koutouku

梅雨空のもと江東区大島にいた。
灰色な午後、橋の上に立つ。頭上には高速道路の高架。

高架に沿って水路らしきものが足下にある。橋の上から降りてみる。
水路の縁は人が歩けるように整備はされているが、
遊歩道といった気の利いたものではない。
土手に沿って雑草が生い茂り、歩けるところは砂を締めたものだ。

水路の水位はなぜか歩道とほぼ同じで、
流れているのか分からないほど静かだ。
なぜか水路は途中で途切れている。
途切れた先は草サッカーでもできるくらいの広さだが、
人はほとんどいない。

水路の金網にもたれるようにうずくまっているホームレスらしき男
向こう側には草の上に寝ている同様の男
高架柱の下には段ボールやら古いトランクが固めて置いてある。
からすが四、五羽けたたましく飛び交っている。

雑草の向こうに土手の壁がある。
壁には絵が描かれていた。
よくある落書きかとも思えたが、どうやら違う。
近づいてみる。
描かれてからだいぶ歳月が流れたようだ。
かなり汚れ、色も落ちている。

母子像のようだ。それも数多く描かれている。
いや群衆だ。
川の景色や、炎もある。
ふと「東京大空襲」の言葉がよぎった。

昭和20年3月の東京大空襲は、
現在の江東区、足立区、葛飾区、墨田区あたりから始められたそうだ。
壁画に沿って見て行くと端の方に大きな字で
『水、火』と書いてある。
この壁画の題名であろう。
反対側の端には、プラ板に、この絵を描いたであろう人々の名前が記されていた。

あの忌まわしい記憶を風化させてはならないという人々の思いが、
この壁画を描かせたに違いない。
そして、その絵が今や風化している。
この絵を風化させた物は何ものだろう?
「時間」などという答えは陳腐すぎる。

腹のみを見せる頭上の高速道路、タイヤがはねる音が低く響く。
土手沿いに尻だけを並べる建物達。
まるで「すきま」だ。
上下の機械、左右の機械に挟まれた都市の空隙。

壁画は描かれた当初から「抵抗」だったようだ。
「すきま」しか描くところはなかったのか、
「すきま」だから描けたのか。

壁画の前には、『立ち入り禁止』の札が立ち、トラロープが張られている。
近々、ここも工事が予定されているようだ。
「水と親しめる遊歩道」となるのか、
「清潔なリクレーション・スペース」となるのか、
いずれにせよキレイ-サッパリとなるのだろう。


koutouku2
| 風景の行方 | 23:12 | comments(2) | trackbacks(0) |
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| - | 2007/08/01 4:31 PM |
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| - | 2007/08/05 11:10 PM |
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