行方の行方

このサイトは盧 興錫による『風景の行方、作品の行方』http://rofungsok.ro21.orgの続編です。
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渋谷、シブヤ、shibuya
shibuya


渋谷、シブヤ、shibuya
幼いころから東横線沿線に暮らしていたので、渋谷はあまりになじみ深い街だ。
屋上にプラネタリウムのあった文化会館には映画館もあり、中学生の頃よくロードショーを見に行った。同じビルには三省堂という大きな書店があり、本を探しつつ立ち読みし、二時間、三時間と時が経った。大学生のころまで続いただろうか。

都内から郊外へ引っ越して十数年経った。シブヤとも縁遠くなった。
折につけ立ち寄る事もあるが、その急ぎ足の変貌ぶりにどこかついて行けないものを感じていた。祭りでもないのに、とにかく人が多すぎて、歩くのに難儀する。人の波に流されるので、ぼんやりもしていられない。人々が用はなくても来る街になったということか。

駅前のスクランブル交差点の信号の変わり目は、さしずめ『ロード・オブ・ザ・リング』の最終決戦のようだ。信号が変われば、反対側にひしめいている人々が一斉にこちらの陣に向かって攻めてくる。

そんなshibuyaに久しぶりに来た。映画を見にきた。
人混みの中をノロノロ歩いて行く。センター街、公園通り…
ニュースやワイドショーで時折見かける顔を真っ黒くした若い女の子などは見当たらない。
まだ明るい…
深夜ともなれば、この通りに家に帰らない中学生や高校生が片手にケータイをぶらさげ、ウロウロしているんだろうか?
そんなことは数ヶ月前までの事で、いまはまた新しい風が吹いているのだろうか?
映画館を目指して歩いている目には何も探せない。

映画は『ダーウィンの悪夢』というドキュメンタリーだ。
シネマライズという館には初めて来た。
「世界中の映画祭で絶賛の嵐が吹き荒れ、グランプリを総なめ」というコピー
…そうだろうな…、異議無し
「一匹の魚から始まる悪夢のグローバリーゼーション」というコピー
…ナイルパーチという魚名が妙に頭に残り、この魚が環境汚染のために、あってはならない進化を遂げて、それを食べている人間が大変な事になるといった話ではない。見る前はそんな映画かなと思っていたが違った。

ドキュメンタリーではあるが、登場する人たちがおのおの陰影深く印象に強く残る。
ストリートチルドレンと同じ境遇でありながらも雄々しく生きぬき、このどうしようもない現実を絵に描いている少年。その絵がすばらしい。
研究所の守衛をしている中年の男。毒を塗った矢じりを舌なめずりするような顔は悪魔の使いのようにも見える。
ナイルパーチをヨーロッパに運ぶウクライナ人パイロット達、それにすがる娼婦達。

子供達が、拾って来たプラスティックを焚き火で燃やす。
そのガスを吸い込むと頭がクラクラして何も考えなくなるらしい。
暴力、性的暴行、エイズ、飢餓、困窮…の恐怖から逃れるためだ。
二度と目覚めない子供もいるらしい。

映画が終わり、再び街にでる。
映画を見終わった目に映る街の風景は、まるでセットのようにキレイだ。
こんなディズニーランドのような街にもチルドレンがいるというから不思議だ。
きっと家はあるが家には帰らず、帰れず、
学校に席はあるが、あまり行かず、
ストリートshibuyaのハンバーガーショップやファミレスでナイルパーチを食べているのだろう。
大きな大きな囲いの底にうろついているこの私も、たまに食べている。

囲いの向こうにナイルパーチが住むタンザニア・ヴィクトリア湖が見える。
| 映像の風景 | 20:53 | comments(0) | trackbacks(0) |
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