行方の行方

このサイトは盧 興錫による『風景の行方、作品の行方』http://rofungsok.ro21.orgの続編です。
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寝そべって何を見つめ何を思っているのか
lion


このところ気温差が激しい。
まだ春先だというのに、日中シャツ一枚ですごせる陽気になったかと思うと、夕方から風向きが変わり、突然真冬の寒さになったりだ。それにあわせて体調がおかしくなるので困ったものだ。

冬の終わりに暖かい日が数日あると、身体は「春が来た」モードになってしまう。新作にとりかかったのは、3月半ばの暖かいある日だった。
丸太をいきなりノミで彫り始めた。午前中から始め、暗くなるまで木槌をふるっていた。調子に乗りすぎてオーバーワークになった。疲れたなと思った矢先、寒さが戻って来た。

「急に寒くなったり暑くなったりすると葬式が増えるんですよね」
こんな話を聞いたのはいつだったか。うわの空で聞き流した頃は、こちらもまだ若い時分だった。最近、この言葉をちょくちょく思い出すから悲しい。

環境考古学者の安田喜憲先生の本によると、
地球というのは人間にとってそんなに生易しい相手ではないそうだ。
「ないそうだ」というのは間抜けな言い方だが、我々が生まれ育ち現在生きている地球の環境というのは比較的安定している時期であり、気候とはこんなものというのは認識不足もいいところのようだ。

いまから3000年前から2800年前(紀元前1000~800年)の地球はかなり寒く、生きるのに大変だったようだ。日本で人気のある古代エジプト、その王国が下り坂になる時期が、丁度その頃だ。

エジプトの末期王朝は紀元前500年頃で今から2500年前だが、世界的な気候悪化期の末期で、「飢饉や疫病が流行して難民が生まれたり餓死者が出て、多くの人々にとって地獄のような時代だった。そのストレスが極大に達した時代にイスラエルの予言者やソクラテスや釈迦や孔子が登場し、人々を救済したのである」※

おおいにうなずける。まったく私たちの生活はわずかな気温の差で、大きなダメージを受けるものだ。現在、野菜が高値になっているが、これは2月の気温が低く育ちが悪かったり、温室栽培の場合、燃料を使ったためだ。

夏の盛り、気温が体温を超えると危険な状況になる。気温が数度も違えば色んなところに弊害が広がる。おそらく数度程度の振り幅は地球という星ではありうべきことだが、人間にとっては大変なことになる。

巨大地震も地球にとってみれば瞬きほどのことだが、その上で生きている生物にとっては大変なことだ。それこそ、くしゃみなんかされた日には、すべての生物の存続さえ危うい事態になることだろう。

このところチリ、ハイチ、メキシコとアメリカ大陸での地震が続いていて不気味だ。地球規模の何かが起こる前兆なのだろうか。
地球の在り方が人間の運命であることは間違いない。

体調が悪くなった時は何もせずじっとしているのがいい。
ライオンなどが、サバンナでじっと寝そべっているのは、きっと夜の狩りのために休んでいるのだろうが、一体何を見つめ、何を思っているのか気になるところだ。
疲れて疲れてどうしようもない時は、ライオンを見習い寝そべってゴロゴロしているのだが、何かせずにいられないのが人間の悲しい宿命だ。寝そべってできること、新聞や本を読む。テレビを見る。できることはこんなところだろう。

「BBC地球伝説」というテレビ番組をよく見る。
自動で録画してあるので、寝そべるときはそれをよく見る。面白い回もあり、退屈な回もある。眠れぬ夜に見てると必ず眠気がやってくるので、便利でもある。

先日『ヒューマンジャーニー 遥かなる人類の旅 始まりの地アフリカ』という回をゴロゴロしながら見ていた。
人類の故郷はアフリカの大地溝帯(グレートリフトバレー)であり、ホモ・サピエンス(現世人類)に進化したのが、20万年ほど前で、その中のある一群がアフリカから出てアジアに、そしてオセアニア、ヨーロッパにと拡っていったそうだ。

この一群というのは、ほんの数百人単位であった。このことは世界的な遺伝子調査で明らかになったという。つまりアフリカから出たほんの一握りの人々が、いまの全世界70億人の先祖ということらしい。
驚きだ。にわかには信じがたいが…

アフリカから移動した一群、色んな状況、様々な環境に出会っただろう。状況に応じ、環境に対し、一群の中では「行けるところまで行こう」と移動した人々、あるいは「ここが良さそうなのでここに残ろう」という人々に分かれただろう。進んでは分かれ、進んでは分かれ、世界に広がった。
「行こう」と「残ろう」人類の歩みはとどのつまりこの二つの行動原理しかないようだ。

この最近の遺伝子調査で分かったことは、ミトコンドリアDNAという母親→娘にしか遺伝しないものを調べていくと、全人類は20〜10万年前のアフリカのある一人の女性に行き当たる。この女性のことを「ミトコンドリア・イブ」という名前で呼んでいる。
この名前、まるでこの一人の女性が全人類の母のような印象を与えるが、実はそうではない。実際は、幸運にもこの女性の遺伝子が女系途絶えること無く全人類に広がったという事なのだが、まったくまぎらわしいネーミングだ。

番組は進む。
アフリカの北は砂漠が広がり北上できなかったが、気候変動により海面が下がり、現在は30キロあるアラビア半島との海峡、マンダブ海峡も10キロほどに狭まり渡れるようになった。そしてアラビア半島の海岸沿いを伝って北上しペルシア湾の北に出た。こういう流れだったが、このペルシア湾周辺を、”エデン”と呼んでいたという結びには、鼻白んだ。

まあ、テレビが厳密な事を言っていたら番組にはならないので仕方ないかとも思う。テレビを前に据え、机に向かって視聴している人はほとんどいないだろう。
大抵ソファに座るか寝そべるか、新聞片手にみかんののったコタツに座っている人が大半だ。テレビ誕生以来、幾百、幾千万の番組が、世界中の家々のリビングやダイニングに流れ込んでは消えていった。
いまでも基本的には同じだ。

ただこのところ、少し趣きが変わって来た。
寝そべってテレビを見ているとき、疑問に思った事、調べたい事をすぐにネットで検索してみたい時がある。あるいは新聞や本を見て確認したい事がある。
できなくはない。ソファやベッドの傍らにノートPCを置いておくという手もあるが、実際は面倒だ。
やはりというかまだまだというか、パソコンというのは机が一番だ。
最近のテレビはネットにつながったりするのもある。でもパソコンに比べたらその動きは比ではない。新聞はたまれば捨ててしまうし、本は書棚の前でにらめっこしなければならないか、無ければ買わなければならない。

アップルが iPadを出した。
ネット閲覧ばかりか、新聞や本も読めてしまう。画面も大きく軽く“寝そべり型”にも、これはいけそうだ。(通信料はちょっと心配だが)

興福寺の阿修羅像を360度から拝観できる iPhone/ iPodアプリができたそうだ。もちろん iPadにも対応するだろう。知識や情報を得る方法、写真や映像を見るスタイルもますます変わっていきそうだ。
寝そべって阿修羅像を拝む、か… 何だかバチがあたりそうでもある。

ともかく端末、接続を含めてインターネット事情は、急速に大きく進化してきたし、進化しつつある。最先端にはほど遠い私個人の環境でさえ、大きく変わった。
わざわざ電話線を外してつないでいた頃、接続速度の遅さにあきれた。それがISDNとなり、光ケーブルとなった。一時は無線でも使っていた。もちろんパソコン自体の技術革新、OSからアプリケーションまでのソフトの発展は言うに及ばない。この十数年の進歩と言うか変化は、私たちの生活を変化させた。

この変化は個人のサイトを作りにも変化をもたらした。
少し前までは画像はできるだけ軽くというのが常識だった。接続に時間がかかるからだ。もちろん今でもその常識は生きているだろうが、接続環境は大きく変わり、また画像の容量を軽くするのが、手軽になったせいもあり、それほど神経質にならなくなってきた。
制約からすこしづつ解放されつつあり、自由になってきた。本を出したければ電子書籍という手段も現実となった。

今回、作品ページを試しにひとつ作ってみた。
『作品 [コギトの椅子] 大きな画像』というページだ。
1200×1252ピクセルという大きな画像を貼付けたページだ。大きくても画像容量は403 KBしかない。商業ページの広告画像と同じような容量だ。

2002年に作った初期のページでは、大きな画像と言ってもせいぜい500×375 33KB程度だった。『風景の行方、作品の行方』1ページ目


媒体が変われば表現のスタイルも自然と変化して行くだろう。やれること、できることを探していくしかない。私自身の行動原理は「行けるところまで行こう」のようだ。ノロノロだが…

私の作品も寝そべって、つらつら見てもらい、何かを思っていただければ幸いだ。

だいぶ前に作ってあった
作品『風景の箱』の動画もYouTubeに載せておく事にしよう。

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※ちくま新書『一神教の闇』安田喜憲著からの抜粋



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