行方の行方

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ゆるい構え
09.12a

「早いな〜、もう今年も終わりだ」
と決まり文句のように、つい先日もつぶやいた。
こうつぶやいたりできるのも、この一年、大きな支障もなく何とか生きて来れたためなので、何ものかに感謝しなければならない。

正月には初詣に行く。特に信仰心があるわけではないが、世間を生き抜いて行くにはあまりに寄る辺が少なく、何ものかに祈念を一年に一度くらいはしたほうが良さそうだといった気分からだ。根は墓参りとさして違わない。草葉の陰や来世といったものを信じているわけではないが、墓にも参り、法事もする。

とかく「信仰心がないのに、初詣は神社に行き、結婚式は教会で挙げ、葬式は寺でする」と自嘲気味に、この国の人々の宗教との関わりが揶揄される。
そうなのだろうか??
信仰心が薄いのだろうか?

神社の数はおおよそ全国に8万ほどあるそうだ。社殿はなく鳥居と祠(ほこら)だけがあるといった小さいものも含めると20万とも30万ともいわれている。お寺も8万ほどあるそうだ。いずれもすごい数だ。そればかりではない、辻や岐路、道端などにある地蔵尊、道祖神などは、それこそ無数というくらい多いだろう。この数をもってして信仰心が薄いとはとても言えない。

なるほど、明治から終戦まで神社は国家神道として崇敬する事を国民に義務化していて、国家的に保護もされてきたようだ。ただその数が明治になってから急に増えたとは考えにくい。ひとつひとつの由来は様々だろうが、そのほとんどが百年単位で拝まれ、尊重されてきたものだ。あるものは江戸時代から、あるものは鎌倉時代から、またあるものは平安時代から、といったようにである。

逆に、明治といえば西欧近代化であり、合理的な街作りのために小祠や地蔵、道祖神などは邪魔だからどけてしまえと考えるのがオチなのだが、実はそうではなかったようだ。また、数が少なくなったとしたら、やはり終戦後とも思えるが、ときおりビルとビルの隙間の猫の額のような空間に小祠を見つけたり、高層ビルの屋上に新しい鳥居と祠があったりするのを見かけると、たとえ少なくなったとはいえ、数えてみれば予想を越えるもので、それはあなどれない数のような気がする。

そのように数多く残っている理由は熱心な宗教者、信徒がいたからだ、と鼻息荒く述べる人もいるだろう。否定はできない。
しかしそれだけではないだろう。
「信者ではないが尊重する」といった「ゆるい構え」の人々、あるいは「ご利益がある」や「バチが当たる」というほどの人々が星屑のようにたくさんいて、永く生き長らえてきたのだ。

元来、日本は自然崇拝、自然信仰の国だ。山、海、木、岩に神宿るといった心を持つ人々の住む国である。
山の麓にある神社、そのご神体は目の前の山という話は多い。生活するいろんな場に神がいるという人々の心根は、はるばる遠方から来られた神々の真偽を取りざた排斥するより、それらを承認し受け入れようとする方に自然と傾くのではないだろうか。「ゆるい構え」とは、そういった寛容な構えなのだ。

「ゆるい構え」は外来の宗教の独占、緊縛、親切の無理強い主義からすれば「信仰心が薄い」ということになってしまうが、反対に心の下地ともいえる自然信仰心はゆるぎないとも言える。《となりのトトロ》や《もののけ姫》はこの下地にダイレクトに訴えるものがあり、多くの人々に受け入れられた。そして映画達は海外でも広く受け入れられたようなので、日本以外でもこういう心の下地は存在しているという証明となった。希望はなくはない。

数百年というスパンでの歴史の軸や歯車を見直すべきときが近づいてきているようだ。私たちの暮らしや人生は、当然、軸や歯車の作り出した歴史時間の流れの中にある。その中を漂っているようでもあり、流されているようでもある。流れが大きすぎてはっきりとは分からない。そしてこの流れの少し先が滝へと連なっているのか、はたまた大きく旋回しているのか、これまたハッキリ分からないが、いままでとは大きく違うということだけは、確かに予想できる。

気がつけば何かをまっさらから始めるには億劫な年齢となってしまっているが、流れの変化を見極めつつ行動を起こして行かなければならない。
抱負ともつかぬ抱負を思う…年の瀬となった。
良いお年を。。


neko

上の写真/岐路にある馬頭観音
下の写真/猫の地蔵

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