行方の行方

このサイトは盧 興錫による『風景の行方、作品の行方』http://rofungsok.ro21.orgの続編です。
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「身体」表現なくして美術史ってありえない
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株価大暴落
金融危機
世界恐慌
恐ろしい活字が新聞紙面を踊っている。

1万8千円あった平均株価が、あっという間に8千円を割り込んだ。
この1万円の落差こそ、私達を取り巻いている「大きな囲い」の影のようだ。
健全な経営をしていて利益もきちんとあげている有望な会社の株が、
突然半値になってしまう。ほんとうに恐ろしい。
窓を開ければ、実際は秋晴れの空が広がっているのに、
「大きな囲い」の中の私達の暮らしは暴風雨の下だ。
映画『自転車泥棒』のシーンが頭の中をよぎる。

秋晴れだけど見えない黒い雲が渦巻き、雷光が走っている…そんなある日、横浜トリエンナーレに立ち寄ってみた。
暴風雨の中の、小さな庇の下に集められた作品たちは、あるものは「囲い」に抗議し、唾をはきかけ、あるものは我が身の小ささを嘆き念仏を唱え、また他のあるものはこのように成り果てた世界をあざ笑っていた。共感できるものもあり、そうでないものもあった。ただ感動を覚えるようなものはなかった。

メイン会場にあったマーク・レッキー『白い巨大な蛮族の行進』というビデオ作品が気に入り、珍しく2回も見てしまったが、YouTubeで見ても十分なような気もした。まあ、YouTubeも膨大な数のコンテンツがあり簡単には面白いものに出会わないだろうから、横浜で出会うようにしてくれた意義は感じた。
どしゃぶり雨のずっと東、六本木ではメサジェ展をやっている。
どうせならメサジェも横浜に呼んで一緒に展示してもらいたかった。
「世界恐慌」の声さえあがっているのに、六本木の高いビルで高い入場料を払うほど肝は座っていない。

横浜に行って数日が経った。
雷音はすさまじく鳴り止む気配無し。
公的資金投入に急上昇したものの、またすぐに暴落。
朝日新聞に、この秋開催されているアジアのビエンナーレ、トリエンナーレ5カ所についての記事が載った。上海、光州、釜山、シンガポール、そして横浜だ。
【乱反射するアートーアジアの国際展から】というタイトル。

掲載二日目「2、身体」と題された記事の一節、
〈整形、ゲノムの解読に食品偽装やメラミン。一方で進む電脳化やスポーツへの熱狂。美術に限らず、現代の表現において「身体」は主要テーマであり続けている…〉(大西若人記者)
身体を巡る表現が国際展各所で見られたそうだ。横浜でもパフォーマンスが多く取り入れられた。
なるほど、言われてみれば巷にも「身体」を全面に出したものが少なくない。エクササイズビデオ、矯正下着、筋肉系エンターティメントなども挙げられる。

”最先端”と呼ばれる国際展で最もベーシックな「身体」なのか。
モダニズムやポストモダンはいざ知らず、美術史のほとんどは「身体」表現が関わってきたと言える。言い換えると「身体」表現なくして美術史ってありえなかった。
このことは意外にも盲点だったような気がする。
美術に関しては「身体」が再発見、復権されたといったほうが正しいと思う。
「身体」…この考えで美術史、文化全般をもう一度見直してみたい気がしてきた。

今も昔もそうだが、美大の彫刻科カリキュラムにおいて「身体」表現は基本とされている。
「身体」表現は「身体」を観察することから始まる。
「身体」観察から、「人体」彫像で完結する人も無論いる。
「身体」観察から、「人間」考、「人類」考に進む人もいる。
「身体」観察から、「存在」へと向かう人もいる。
ブランクージ、ジャコメッティも、みんなこのカリキュラムから始まった。

この一、二週間の間に、「実体経済」という語が頻繁に出てきた。
マネー経済、市場経済の反意語と勝手に思い込んでいる。
連呼され始めた推移から想像するに、勝手もそう遠くはいないだろう。
「実体」から遊離した経済ー幻影の経済があり、「身体」から遊離した文化ー幻影の文化があったということなのかな?…もう少し考えてみよう。


doguu

(紀元前2〜3千年 ギリシア彫像)


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